
新建築社「住宅特集」2018年9月号に【山のセカンドハウス】が掲載されました。
関係者の皆様、おかげさまで良い建築が出来ました。ありがとうございました。
木下洋介構造計画(担当:木下)
照明計画:mantle design(担当:久保)
施工:テクノアート(担当:春田)
意匠設計:GEN INOUE(井上+宇谷)

アイランドキッチン:リビングプロダクト(担当:飯島)
薪ストーブ:DLD(担当:中村)
移動家具:石巻工房(担当:芦澤、千葉)
無垢フローリング:ミハマ通商(担当:久保田)
ダイニングタイル:フォンテ・トレーディング(担当:窪田)
鋳物浴槽:大和重工(担当:河部)

計画地は都心から車で1時間半程度の場所にあるため、日常を忘れ、1人で落ち着いた時間を過ごせるセカンドハウスの在り方を模索すると同時に、友達家族と過ごし、法事などで親戚が集まるなど、複数の家族が同時に使用することも求められた。
敷地は数軒の住宅が使う生活道路の坂の上、突き当たりにある。南が谷で視界が抜け、北には大きなモミジのある山やキャンプをする場所があるため、南北方向に連続する豊かな自然や環境を建築に取り込むことを考えた。まず、南北方向に8枚の壁をたて、7つの短冊状の空間を配置し、素材や光の入れ方、空間のプロポーション、外部空間の挿入など、それぞれの空間に違いが出るように計画した。一方、視線を東西方向に向けると、隣の空間との関係性を調整できるように配置した開口部を通して、異なる空間の設えや様々なアクティビティの重なりを感じることができる。また、深い軒の出や袖壁で囲うことで生まれた半戸外空間は全体の35%を占め、使い手が内部空間と等価に居場所として選べるように計画している。
このようにキャラクターの異なる短冊状の空間に季節や時間の流れで変化する周辺環境を取り込み、その違いを使う人の拠り所とし、その時の気分で居場所を選べるような、用途を限定しない空間。独立性の高い短冊状の空間を貫通する開口部によって他者との距離感を調整し、それぞれが別々に過ごしながらも、1つの同じ場所に居るようなワンルーム空間を目指した。
また、この場所は家族や親族だけで使うのではなく、設計事務所のセカンドオフィス、近所の方との交流の場として活用している。例えば、落ち着いた空間(Room 02)は、プライベートな読書スペースからアーティストを招いた展示ギャラリーに変わり、開放的で人が集う空間(Room 05)は、ダイニングから仕事場の執務スペースや地域のおばあさんを招いた料理教室の場に変容する。これからも閉じた別荘ではなく、開かれたセカンドハウスとして活用していきたい。(井上玄・宇谷淳)